オレンジジュース~俺と一人の生徒~



「俺な、直に出会うまでこんなに満たされていなかった。結構寂しい男だったんだぞ・・・」



直は、嘘だって言って笑った。



嘘じゃないよ。


俺は、バレンタインにたくさんのチョコをもらっても、心の中は寂しかった。


俺をわかってくれる人はいないんじゃないかと思っていた。




「お前に出会えて良かった。」




直は照れているのか、うつむいたまま顔を上げなかった。




「直・・・?」




手を伸ばして、直の手に触れた。






「デザートはこちらからお選びください。」




タイミングの悪い店員がデザートのメニューを持ってきたので、俺は手を離した。





「迷う・・・」



いつものことだ。


直はいつもデザートを決められない。




去年の夏休み、2人で内緒のドライブをした時もコンビニでデザートをなかなか決められなかった。





「いちごのタルトにしようかなぁ・・・」



「じゃあ、俺は真っ白プリンにするよ。それと悩んでるんだろ?」




直は、嬉しそうに頷いた。


直のことなら何でもわかるよ。


だって、こんなにも直を愛しているから。





だから・・・


直の心のちょっとした変化が俺にはわかる。




何を考えてる?





美しい夜景を見つめながら、

瞬きもしない直は・・・

何を想ってる?





子供のようにはしゃぎながら、デザートを食べる直を、俺はずっと見つめていた。










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