オオカミ系幼なじみと同居中。


家に帰るとまだ誰も帰ってなかった。


おじさんは仕事だしおばさんもパートの仕事してる。

先に帰ったはずの要は……友達と出かけたのかな。



あたしは自分の部屋に入ると窓を開けた。


むっとした風が頬や髪、制服の中をすり抜けてゆく。



ジジジーー




蝉の大合唱がどこからともなく聞こえてきてあたしの体にまとわりついた。



今年も暑くなりそうだな……。



そんな事を思い、ふぅと溜め息を漏らして視線を落とした。



「…………」



あれ?

…………なんで?


窓の下に目をやると、要があたしを見上げて立っていた。

要は人差し指でチョイチョイと下をさした。



『降りて来いよ』



そう、ジェスチャーしているようだ。




――何?



あたしは、言われるまま勢いよく階段を駆け降りた。



「……要、ど、どうして?」



てっきり、どこかへ行ってしまったと思ってただけにあたしの心臓は激しく波打った。


玄関を勢い良くあけると、まだ制服姿の要があたしを待っていた。



「ちょっと俺に付き合ってよ」

「え?」



要はそう言うとあたり前のようにあたしの手を取って歩き出した。


あたしは要の行動の意味が分からないまま、ただその背中を見つめた。



< 119 / 301 >

この作品をシェア

pagetop