オオカミ系幼なじみと同居中。


要は、ただ黙って歩いていく。


一歩一歩ゆっくり歩く要の足音に、あたしの小さな足音が続く。

頭一つ分より少し大きな要を見上げて、やっぱり男の子なんだと実感する。



大きくて、でも指はすらっとしててとても綺麗な手。

見るたびうらやましいなって思ってた。

でも、こうして手を繋ぐとゴツゴツしていた事に気がついた。





―――……あれ?



繋いだその手に、遠い昔この温もりを知っているような気がした。




なんだろう、この感じ。

懐かしい……のかな?



……あたし、この手を知ってるの?



要はあたしの手を引いて、小さな公園までやって来た。




真ん中には大きな桜の木がある。
その桜の木を取り囲むように恐竜のすべり台とブランコ。
それにささやかな砂場があった。



要は恐竜のすべり台に近づくと、繋いでいた手を離した。
そして、あたしを見つめた要はなにかを伺っているみたいだ。



「かわいいとこだね。要、なんでこんなとこ知ってるの?」




離された左手が熱い。

なんだか切なくなってあたしは、わざと大袈裟に公園を見渡した。



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