オオカミ系幼なじみと同居中。

声のした方へゆっくりと視線を送る。


そこには―――……




「…………」


 
あ……



誰もいないと思っていた桜の木の根元。
そこにいたのは、寒そうに体を小さくしてうずくまる、要の姿があった。



「……ど…して……」



あたしは、やっとの事で言葉を紡ぎだす。
要は腕を組んだまま、ゆっくりと体を起こした。


そして、呆然と立ち竦むあたしの目の前までやってくると、両手を上着のポケットに突っ込んだ。


……怒ってる?



眉間にシワを寄せて、あたしを見下ろす要。
なんだか、あたしは要と最初に出会った頃を思い出していた。


そうだ……
あの時もこうだった。

めんどくさそうに、少し挑発的な目であたしを舐めるように眺めた要。
不覚にも、その瞳の力に胸がドキリと高鳴った。



『あー。 あんたがミオ』



そう言って、ふーんと鼻で笑った要。
もう一度、その言葉を言われそうな感覚になってしまう。

そんな事をぼんやりと考えていた……




え――――



そして不意に要がポケットから手を出して、あたしの体を強引に引き寄せた。



……ドクン



走ってきた事で、鼓動を速く刻んでいた心臓がそれよりも大きく波打った。



「あー! マジさみぃ」



要は吐き出すように言って、さらにギュッとその腕に力をこめる。
あたしを包む要の体は、確かに冷たくて長い時間ここにいたことがわかった。


でも、あたしは要の体に手を回す事ができなくて。
固まったまま、その場に立ち尽くしていた。


だって……
あたしが来るかどうかなんて、わからなかったはずなのに……


ずっとこんな寒いところにいたなんて。




「なん……で?」





< 278 / 301 >

この作品をシェア

pagetop