オオカミ系幼なじみと同居中。


目の前に差し出されたものに、あたしは言葉を失ってしまう。

視界がどんどんぼやけていって、もうなにもかもがユラユラと揺れている。

打ちあがる花火の音、近くの家から聞こえる楽しげな声。

俄かに騒がしくなった夜の街。


それすらもまるで夢の中の事のようだ。




あたしは、要の手に収まっているそれから目が離せなくて
震える唇を、手を、体を……
抑える事も出来なくて……。


頭が真っ白……
まさに、そんな感じ。



ただ、言葉を失っていた。





「ここは、俺のためにとっとけよ」





その言葉に、とうとう頬に一筋の涙が零れ落ちた。
そして、要は手に持っていたものをあたしの左の薬指にそっとはめた。




そう……


それは、小さな指輪。




キラキラと、光り輝いている小さな苺のモチーフをあしらった指輪だった。




ゆっくりとあたしの指にはまっていくその苺の指輪。

その一連の動作が、スローモーションに感じて、まるで映画のワンシーンさながらだ。



でも、ちょっとだけ大きなサイズの指輪に要らしさを感じてしまう。

つめが甘いよ、要?



「……へへ」


「……お前、今笑うとこ?」




呆れたように、少しだけ口を尖らせていじけて見せる要。
指輪のはまったあたしの手を要はギュッと握り締めた。


きっと、もっと感度的なシーンになると想像してたんだろうな。



――大丈夫。


十分、あたし感動してるから。




笑い泣きのあたしを呆れたように眺めると、要は少しだけ頬を緩めた。



「……あーもうッ!!」

「わッ」



気がつくと、あたしはまた要の腕の中にすっぽり収まってしまっていた。

肩に回した要の手が、そっとあたしの髪をかきあげる。
ふわりとあたしの鼻を、甘い香りがかすめた。



「……」






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