黒姫

再び那央の手が透の頭を撫でる。
やや長い黒髪を梳くような手を、何故か今度は振り払えなかった。



「……兄さん」
「何?」
「……いや、なんでもない」



悔しいけど、完敗だ。
人生経験云々はあながち間違いではないのかもしれない。


早く大人にならなくては、と焦る反面、まだ子供でいたい、と心のどこかが悲鳴を上げる。

それを見透かされた気がして、やはり那央は“兄”なのだと、何となく思った。


「透。瑞姫を頼むな」
「……ああ、わかってる」

< 115 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop