黒姫

青野、透の苗字だ。

透と限定された訳ではない。
だが可能性は、かなり高い。


「痛っ……!」


動いた途端、身体中が軋むように痛む。
それを振り切って立ち上がろうとしたところを、再びクラスメートによって押さえ付けられた。

先ほどまでとは違い、全力で抵抗している時、また同じ声がする。


「なあ、知ってるか? いじめって法律違反になるらしいな。実際裁判で有罪になった奴もいるらしい」


今度こそ、クラスメート達の表情が凍り付いた。


「集団が個人に暴力を振るう。列記としたいじめだよな。ここで私が警察でも呼んだら……どうなるだろうな?」


声を上げて笑った少女の声は、確実に瑞姫を理不尽な暴力から助けた。
それに感謝の念を感じながら、瑞姫は力の抜けたクラスメートの輪から逃げ出した。

< 134 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop