黒姫

幸い、帰宅部は既に姿なく、部活終わりには早すぎる時間だったため、周囲に人影はない。
瑞姫と透は、寄り添うようにして帰路についた。
それは、一見付き合いたての初々しい恋人同士のような距離にも見えるが、話している内容は恋人同士とは掛け離れたものだった。


「で、沢口って結局誰?」
「だから、俺のクラスメート」
「ただのクラスメート? それなら私のいざこざには首突っ込まないと思うんだけど」
「突っ込んだのは口だけどな。……不登校気味な奴なんだよ。保健室登校ならぬ屋上登校してる、物好きな奴」


ふぅん、と一応納得した瑞姫は、自分の問題の話題から、沢口という女子と透についての話題に、会話をシフトチェンジにかかった。

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