黒姫

あっ、と思う間もなく頬を雫が滑り落ちる。
咄嗟にベッドサイドに放置されていた、潰れたティッシュ箱に手を伸ばした。


「いや、それ空っぽだから」


那央から微妙に空気を読まない突っ込みを受けて、思わず泣き笑いの表情になった。


「あ、はは……締まんないなぁ……」
「ごみは捨てとけって」


苦笑いした那央に、ぐいっと引っ張られる。
珍しく一切抵抗せずに、瑞姫は那央の胸に顔を押し付けた。


「ほら泣け泣け。大体瑞姫はいつも我慢し過ぎだよ」

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