黒姫

ぐす、と鼻を啜る。
小さく嗚咽を上げて、でも泣き笑いできるだけの余裕があった。


「べ、つに我慢してな、いもん」
「無意識なら尚悪いだろ」
「無意、識のこと注意されても、わかん、ない」
「……取り敢えず、今は泣いてればいいんじゃない」


那央の胸に縋り付いて、子供っぽいな、と思いながら、それでもいいや、と思った。

まだいいや。
子供でいいや。

甘やかしてくれる誰かがいるなら、少しだけ子供で居たい。
背伸びするのにはもう疲れたから。

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