黒姫

それでも。
私は鈴羅にあんな顔して欲しくなかった。


「有難迷惑?」


首を傾げた黒瀬の声と表情が冷静を通り越して冷たく響く。

違うのに。
私は、あんたを虐げたくて元凶になった訳じゃないのに。


「そう! 有難迷惑。だって誰も、黒瀬を虐めろなんて頼んでないじゃん! 勝手にキレて勝手に虐めたんじゃん。それを正義みたいな顔されたこっちの気持ちなんて考えて……」
「真奈っ!」


何で誰も頼んでないのに私を悪役にするの。

鈴羅と私を天秤に掛けたら、このクラスは確実に鈴羅に傾く。
それは、別に良い。

でも、黒瀬と私だったらどうだろう。
今は、私。
でも、いつか黒瀬に傾いたら……。

それを恐れる私は、相当嫌な奴なのかもしれない。

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