二手合わせ



帯を巻いている間に、ようやっと恵梨ちゃんが泣き止んだ。


「ほな、行こか」


ポンポンと二回、背中を叩いた後に、恵梨ちゃんと手をつなぐ。

とか言うても、恵梨ちゃん、握り返してきぃへんから、俺が一方的に繋いどるだけやけど。




新撰組にもお抱えの医者はおる。

けど、ちょい遠い。

せやから少し歩かなあかんけど、いかんせん人が多い。


「恵梨ちゃん、なるべく俺の後ろ歩いた方がええよ。人にぶつかってまうからのぅ」


俺の言葉に、恵梨ちゃんは頷くだけやった。

でも…屯所の時よか明らかに歩き方が良うなっとる。


恵梨ちゃんが視覚以外の感覚を鋭くさせとるのが、それでも恐怖しとるのが、握っている手から伝わる震えで分かった。


「あと少しや」


えぇ練習になったかもしれんな。

人にぶつからんよう、歩く練習に。



目的地に着いて、カラリと戸を開け


「良順さん居るんかー!?」


叫んだ後、恵梨ちゃんに「着いたで」と呟くと、恵梨ちゃんの身体の力がふっと抜けた。




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