二手合わせ



首を竦めて、目をギュッと閉じると、ぽん、と頭に軽い衝撃。


「え…」


吃驚して目を開ける。


「気にしてない…っていったら嘘になる、ってか、ほんとはめっちゃ気にしてるんだけど。あんなんでも俺の姉ちゃんなわけだから…」

「うん、そうだよね…。ごめんね」

「でもさ、マキさんのせいだとか、そんなことは思ってないから」

「…っ」


頭に乗せられていた真咲くんの手は、数回、あたしの髪を撫でて、離れていった。

瞬間、視界が涙でゆがむ。

さすがに親友の弟の前だし…年下に泣いているのは見られたくはないから、グッと堪えた。


「父さんと母さんも、マキさんのせいではないって思ってるし。そんな気負わなくてもさ、姉ちゃんのことだから、ひょっこり帰ってくると思うよ?」


な?、と言って笑う真咲くん。


「そう、かな。そう…だね。恵梨だもんね!」

「ああ。だから、大丈夫だよ、マキさん」


あたしは、その言葉に力強く頷いた。

そして、「最近暑くなったね」なんて話してから、それぞれ帰路に就いた。




……本当は、真咲君だってあたしを許せないはず。
あんなこと言ってるけど、真咲くんはお姉ちゃん大好きっ子だし。

でも、あたしを励まそうとしてくれた。


「大きくなったなぁ、真咲くん…ほんとに」


いつの間に、背を抜かされたんだろう。

小さい頃は、駄々っ子だったのに……、自分が辛い時に、あたしのことを励まそうとしてくれた。


「…男の子の成長って、早いなあ」


夕焼けで赤く染まった空に向かって呟いた。


あんなに良い弟がいるんだからさ。

早く帰ってきてね……恵梨。



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