二手合わせ
(side:恵梨)


あれから、永倉さんとはよく話すようになった。

他愛もないことから、私のことまで。


「そうか……弟がいたのか」

「生意気ですけど……昔は可愛かったのに」


不満気に、唇を突き出しながら言うと、永倉さんは軽く笑って「姉を持つ男はそういうもんだろう」と言った。

えー…。


「そういえば」


思い出した、というように永倉さんが話し出す。


「少しの間だが、女中が入ることになった」

「……そうなん、ですか」


とりあえず頷くも……[じょちゅう]って何?
曖昧な返事に、私が理解していないことを悟ってくれたのか、永倉さんが説明してくれた。


「女中は、…まあ、あれだ。飯を作ったり、洗濯をしてくれたりする…。なんと説明していいか分からないな…」

「あ、大丈夫です。今の説明でなんとなく分かったんで」


家政婦さんやお手伝いさんみたいなものだろう。
大所帯の新撰組で、そういう人を一度も見たことがないことに、今さら気づいた。


「今までは、雇ってなかったんですか?女中さん」


率直に疑問をぶつける。


「新撰組は女人禁制だからな。隊内の風紀が乱れないように」


女人禁制……。
呆けていると、永倉さんが続けて説明してくれた。


「だから本来は、女中など雇わない。食事も洗濯も、隊士が順々に担当することになっている」

「へー…。そうなんですね。…あれ、じゃあなんで今回は雇うことになったんですか?」





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