たぶん恋、きっと愛



「ああ、おかえり…って…何だその顔」


麻の布に、挽いたコーヒー豆をあけて、熱湯を注ぐ。

最初は蒸らすように。

豆がふわりと上がったら、ゆっくりと一定の速度で熱湯を注いでいく。


部屋中に漂う、コーヒーの香りは、いつもの香り。



「なんで帰宅早々、雅ちゃん泣かすのさ」


怪訝な顔をして振り返った凱司を見つめているのは、不安げな雅。



「…泣いてねぇじゃねぇか」

「あ、そう? でも嬉しそうではないな」


雅ちゃんおいで、と呼び寄せる。
新しいコーヒー冷やすから、全部注いじゃってね、と全部は言わなかったけれど。

雅はガラス容器に残る冷たいコーヒーの量を確認すると、三人分のグラスに、氷を少しだけ、いれた。



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