たぶん恋、きっと愛


「まだ麻酔効いてるから平気」


柔らかく笑う鷹野の右手をまじまじと見つめ、指輪が血で汚れているのを見つけた雅は、そっとそれを外そうとする。


「つい、指輪したまま手ぇ出しちゃったから…」

そっと雅の指をどけて、指輪を外した。


鬱血こそしているが、折れてはいない指を、握り、開いて見せる。


薄暗い室内は、再び照明レベルがあげられて。

雅は、すっかり着乱れた鷹野の顔色が、笑顔の割りに優れない事に目を止めた。



「血…いっぱい出たの…?」

「うん? どうだろう。なんだかよくわかんないうちに、宇田川さんたちに捕まったから」


くすくす、と愉しそうに笑う鷹野は、凱司を振り仰ぐ。



「ちょっと宇田川さんたち手荒いよ…。俺、あんなに一斉に男に乗っかられたことない」

死ぬかと思った、と愉しそうな鷹野は。


右手を握って離さない雅の手を、しっかりと握り返した。
 


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