たぶん恋、きっと愛


「やっと見つけたぁ!」


店の入り口で上がった、甘えた声に、思わず振り返った。


「異動したって聞いたけど、異動先を教えてくれなかったから探しちゃった!」


私に黙って異動なんて酷いじゃない、と笑顔で拗ねる女性客を、そこにいた従業員全員の視線が捉える。



「………すみません、ルールなもので」

あくまで静かに頭を下げた鷹野は、彼女を受付に誘導すると、すみません、僕の予約はいっぱいなんです、と、伏し目がちに微笑んだ。


「あ、いいのいいの。今日は会いに来ただけだから」

他の客に気遣ってか、小声で話す彼女に、受付にいた従業員は微かに眉をひそめた。



「鷹野」

奥から、店長が呼ぶ。


鷹野は彼女に一礼すると、くるりと踵を返し、どうやって追い返そうか、と、真剣に悩んだ。
 


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