たぶん恋、きっと愛



白いシャツに、黒いベスト。
黒のソムリエエプロンに黒の細いネクタイ。

黒い髪。
黒い目。

銀のピアスに、銀の刃物。



つい2週間前に脇腹を縫ったなどとは思えないような、涼やかに伸びた、背筋。



たかが美容師。
されど美容師。

客が付かなきゃ話にならない。


午後は赤にしようかな、などと思いつつ。

身なりを整え、甘過ぎない微笑を浮かべる。



この美容室の制服とも言える格好で、唯一自由に選べるのは、ネクタイのみ。

鷹野は赤を手に取り、結局やめたのか、光沢のない黒いネクタイを締め直した。



昼間は美容師、夜はホスト。
つい去年までそんな生活をしていた鷹野には、特に苦もなく顧客はつき、独特の甘い声に。

その大半は、髪も切らない女性客だった。
 



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