たぶん恋、きっと愛


「…“死なない”が凱司さんの“大丈夫”基準…? やだ、全然信用できない…」

鷹野さん怪我した時の“大丈夫”だって、大丈夫じゃなかったもん…、とぶつぶつ呟く雅を、厭そうに見た凱司は。

雅の前にあるチェリーパイを掴んだ。



「ああっ!!」


がぶり、と一口かじって皿に放り投げるように残りを戻した凱司は、唇を親指で拭う。



「生爪剥がしたくらいでガタガタ言うな」

「ああぁ…」


「み…雅ちゃん…俺のと替えてあげるから……泣かなくても」


ほんのりべそをかきそうな雅をなだめるように鷹野は笑う。



「…甘い。雅、コーヒー」

「うわ、すげぇ傍若無人」


うう、と涙を拭く振りをしながら立ち上がった雅は、それでも、鷹野さんもコーヒー要りますか? と、首を傾げて訊いた。




やっぱり、借金を完済するのは先がいい。

ここにいて、笑っていたい。


鷹野は、紅茶まだあるから、と首を横に振り、甘やかに目許を和ませた。
 


< 397 / 843 >

この作品をシェア

pagetop