たぶん恋、きっと愛
「……わかった」
凱司がそう、はっきり答えたのは、多分、ほんの数秒の後だったのだと思う。
「…忘れるが、留めておく」
ここに、と自分の胸を親指で三度叩いて、凱司は僅かに目を和らげた。
「そんな緊張すんな。髪、解いてやるからシャワーしてこい」
大きな左手は、雅の頭を撫で、指に触れる小さな金属を抜き取った。
よくもまあ、こんな小さなもので形を保っていたものだ、と感心するほどの、2本のピン。
赤いリボンを巻き込み、ねじってある髪は、鷹野が馴染ませていたクリームの効果か、そのままの形で、くるりと重力に逆らわずに解けて落ちた。
赤いリボンを引っ張り、根元の結び目から、抜き取る。
「…友典は、重いか?」
雅を守ろうと、迷わず割り込んだ友典。
だが、割り込まなければ、柳井も手は上げなかったろう。
鷹野のしたように、問答無用で挫かなければ、意地にもなる。
「友典さんは……凱司さんが大事なだけだから…二度と、あたしのせいで怪我なんか…させない」
きゅ、と唇を結んで、俯いた雅は、ごめんなさい、と意外な程強い視線を、上げた。