たぶん恋、きっと愛


鷹野がドアを閉めると同時に、しがみつくように飛びついてきた雅を、抱き止めた。


「大丈夫だよ」


小刻みに震える理由は、明確にはわからない。

ただ、何かに怯えているのは、確かなのだと、鷹野はできる限りの穏やかさで囁く。



「あたし…あたし………どうしよう。友典さん、怒られる。宇田川さんに、怒られる?」

あたしが凱司さんだけを見ないから。
鷹野さんを、頼ったから。

凱司さんだけを見てなきゃ、いけなかった?



「大丈夫だよ。由紀さんがいるんだからさ」

雅ちゃんが泣いたら、あいつ余計マズいとこに立たされるからね、今は泣かないでやって。

上で、泣いていいからさ。



抱きかかえるように階段を、のぼる。

振り返れば、ドアの向こうで諦めたように頭を下げる由紀と、引き剥がされたまま、縋るように雅を見つめる友典とが、見えなくなった。
 


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