切端詩集 断片的な虚構
雪見カフェ



『雪見カフェ』


ひんやりと唐突に
思考の空白に雪が降る

ちらちらと切片が
冷たさかあたたかさか
判別のない夕暮れの空気に
まぎれ、消える

やまない…やまない…

静かに降り積もりながら
僕を囲み封じ込んで
いつの間にかかまくらみたいに
守られたような安全な部屋

中は暖かい
少し赤い指先
滲んでいる涙と
詰まりかけた鼻
夜が進むのに
暗闇を明るんで雪明り
街灯がいつもより
幻想にまかれて煙る

そうだね
甘い香りがいい
バニラとか
桃とか
紅茶の中に溶かしたい虚無とか
絶望とか
いいね
五感しか頼れない今夜
雪を見ている
厚い木のテーブルに寄り添って


















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