あたしが見た世界Ⅲ【完】
「……………………親父……」
リュウ兄が半ば呆れたように父さんを呼んだ。
「ん?」
「まさかとは思うけど、」
リュウ兄は、言うべきか否か、迷っているようだった。
「過去のことだし、言ってみ」
父さんはまるで、寺にいる住職のような穏やかな顔をした。
………いや、ハゲではないけど。
それを聞いたリュウ兄は意を決したのか、父さんの目を見て言った。
「最初、夜一と母さんがくっついていたのに、父さんが夜一から母さんを奪った」