超能力者は暇ではない
「わかりませんかねって言われても、俺らも今いろいろ調べ始めた所だからな……その水野とやらは、誰かから脅迫でもされたのか?」
どうせただの被害妄想だろうと続けようとした京の予想を越えて、外山は小さく頷いた。
「……どうやら、そのようです。ただ、相手が誰なのかは教えてもらえませんでした」
外山の弱々しい返事に、リオが反論する。
「教えてもらえなかったって……それを聞き出すのが警察の仕事でしょう」
「うん、リオくんの言う通りだと思うけどなー」
なぜかリオの味方をする久保に、外山が申し訳なさそうな顔をする。
「……すみません。いや、僕も追求したんだけど……彼女は『相手が誰かは話せない』と叫んでいて……いや、話せないというより、話したくないという雰囲気でしたね、あれは」
「話したくない?身内ってことか?」
京が外山の話に食い付く。
外山は少しだけ震えていた。
「身内って可能性も捨てきれない……けど、いくら身内でも自分の命を狙っていたら警察に言うくらいするでしょう」
外山は自販機の隣に置かれた古いベンチに腰掛けると、大きくため息をついた。
「……情けないですよね、警察がこんなんじゃ……。でも、僕、なんか怖くなって聞き出せなかったんです……。もしかしたら、小高さんを消した犯人は人間じゃないかもしれない。そんな相手のことを知ってしまったら……僕も消されちゃうんじゃないかと思って」
外山の青ざめた顔を見て、久保が心配そうな表情をする。
「……外山くん、もしかしたら犯人に心当たりがあるんじゃないの?」
久保の発言に外山は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに俯いて黙り込んでしまった。
この妙な沈黙が、真実を語っているような気がした。
「……わかってる事だけでも、教えてもらえませんか?」
リオが言うと外山は、周りをキョロキョロ見回して何かを警戒しているような動きを見せた。
しかし、時間が時間だけに周りに人はいない。
外山はほっとしたように小さくため息をつくと、少し間を置いてからゆっくり口を開いた。
「……実は、冬草学園の」
その時。
「外山警部補!!」
小太りの男性が息を切らしながら走ってきた。