超能力者は暇ではない
「あ……相沢!?」
外山がベンチから立ち上がる。
小太りの男性・相沢は、だらだらと汗を流しながら四人の前で足を止めた。
かなり息が荒い。
「外山くん、これ誰?」
久保が相沢を指差して言うと、外山が説明を始めた。
相沢は外山の部下の刑事で、外山と組んで行動しているらしい。
相沢はズボンのポケットに乱暴に突っ込まれていた水色のタオルで汗を拭うと、「いやあ、突然すみません」と頭を下げた。
「何かあったの?」
外山の問いに、相沢が慌てながら手帳を取り出す。
「す、すみません。実は先程、警察署に何者かから電話がありまして……どうやら、小高さんと関根さんを消した犯人のようです」
相沢の報告に、外山が言葉を失う。
「その電話の内容は?かけてきた奴の性別は?できるだけ詳しく教えてくれ」
いきなりの京の質問攻めに、相沢は少し不審そうな顔をした。
無理もない。
京とリオは警察とは無関係の「便利屋」なのだから。
「オレらも小高さん達の件で捜査をしてるんだ。可能なら、警察署でいろいろ聞かせてもらえない?」
久保が名刺を出して言うと、相沢は背筋を異常なまでに伸ばした。
「これはこれは、名探偵の久保さんじゃないですか!!ぜ……ぜひ来てください!!」
相沢はよほど久保を信仰しているのか、震えている。
「久保さんって、そんなにすごい人なんですか?ちょっと頭良いだけにしか見えませんけど」
リオが久保をチラチラ見ながら言うと、相沢はカッと目を光らせた。
「すごい人に決まってるじゃないか!!これまでに解決した事件は海外のもの含めて100件以上!!あの有名な「二本木連続幼女誘拐事件」や「宮寺老夫婦密室殺人事件」を解決に導いた超天才名探偵なのだから!!」
興奮しながら話す相沢に、久保が「そんなに褒めても何もあげないよ〜」と笑う。
思えば京もリオも、久保とは今日出会ったばかりだ。
知らない事はまだまだたくさんある。
「ま、そういう訳だから警察署行こう!京くんとリオくんもね!」
京とリオは自分たちが「久保の部下」扱いされるのに少し不満があったが、せっかくなので警察署まで行ってみることにした。