超能力者は暇ではない

「なるほどな……確かにあんな電話もらっちゃったら誰にも話したくなくなるわな」

相沢が運転する車の中でも、京は犯人のことだけを考えていた。

「とにかく、明日も1日使っていろいろ調べてみる必要がありますね……」

リオの言葉に、久保がウンウンと頷く。

「それでさ、オレ、思いついたことがあるんだけど」

久保の言葉に、助手席から京が振り向く。

「なんだ?犯人の手がかりを掴む方法か何か?」

久保はチッチッと指を振ると、満面の笑みで答えた。

「オレも京くんとリオくんの家で暮らそうと思うんだけど、どうかな?」

京とリオは顔を見合わせると、しばらく間を置いてから久保を見た。

「久保さん……本気で言ってるんですか?」

リオが冷めた目を久保に向ける。

「え?当たり前じゃないか!オレがそんなくだらない嘘をつくと思ってるのかい?」

「嘘云々じゃなくて常識的に考えておかしいだろうが!なんで今日会ったばかりの得体の知れない男を我が家に招き入れなきゃいけないんだ!」

京が怒鳴りつけると、久保が小さくため息をついた。

「そりゃあ残念だ……せっかく君達がオレを受け入れてくれたらオレが稼いだ金で養ってあげようと思ったのに……」

その言葉に、京とリオが耳をピクッと立てる。

「暇な時は掃除や洗濯や料理だってやってあげるつもりだったのにな〜」

久保がわざとらしく言う。

京とリオはもう一度顔を見合わせると、コクリと頷いて久保を見た。

「そんなに言うなら同居してやっても良いぜ?なんなら部屋に荷物運ぶの手伝ってやろうか?紅茶も入れてやるよ!」

「そうですね!そこまで言うなら断る理由もないですしね!なんならメイド服もお貸ししますよ?」

「や、メイド服は結構」

三人のくだらないやり取りを聞きながら、相沢がハハッと笑う。

「君達は本当に面白いね!君達みたいな人ならきっと、事件をあっという間に解決できちゃうんだろうね……」

相沢の自信無さげな発言に、京が小さく笑う。

「いや、正直今でもまだビビってるよ。奴らが俺らの存在を知ってる……それだけで今夜は眠れない気がする」

京は自分の掌を見つめながら考えた。

果たして自分ごときの超能力で、相手を倒すことができるのだろうか……

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