超能力者は暇ではない


女は商店街を抜けると、いくつもの細い道を進んでいった。

リオもそれに続き、女の後を追う。
雨に濡れたメイド服は、水を含み重くなっていた。

ここで超能力を使えば、濡れずに女を追える。
だが、ここで力を使ってしまうと女と戦う時に力を出せない……。

リオは改めて、自分の弱さを思い知った。

そんな時に頭に浮かぶのは、不器用ながらいつもリオを支えてくれる京……。
しかし今、京はいない。

不安に駆られながら、女の後を追い続ける。

女はリオに気付くことなく、ある建物に入っていった。
どうやら、かつて工場として使われていた建物らしい。
今はもう使われていないようで、全体的に朽ちている。

リオは女と距離を取りつつ、建物の中へと潜入した。

「ここが……人消師のアジトなのか……?」

真っ暗な建物の中を見回していると、入口の扉が大きな音を立てて閉まった。

と同時に、建物内に不気味な笑い声が響いた。

「え、な、何!?」

慌てて辺りを見回すも、暗すぎて何がなんだかわからない。
その時、何者かがリオを攻撃した。

「うわあっ!!」

腹部を殴られたような衝撃に、思わず倒れ込む。
徐々に目が慣れてくると、今自分がどういう状況に置かれているのかがわかってきた。

目の前には先程の女。
女の手には大きな鎌。

鎌には装飾が施されており、それがキラリと光った。

「まさかあなたから私に近付いてきてくれるとは……そして私の罠にまんまと掛かってくれるとは、本当に光栄です」

女は警察署で聞いた脅迫電話と同じ声でそう言うと、倒れ込むリオの腹部を強く蹴った。

「ぐは……っ!!」

「あははははは!!痛いですか?苦しいですか?超能力者と言えど所詮は人間!!私に勝てるはずがない!!あっははははは!!」

女は甲高い声で笑うと、リオの胸倉を掴んで顔を近付けた。
ニヤリと不気味な笑みが、一層恐ろしさを増している。

「おまえは……一体、何者……」

掠れた声でリオが尋ねる。
女は、リオの耳元で呟いた。

「私は財前。人消師団のメンバーです。弱くて哀れな人間を、この世のゴミとしか言い様のない人間を、この手で消してあげているのです」

女……財前は、リオから手を離すと、大きな鎌をブンブンと振り回した。

「おっと、あなたはまだ消しませんよ?あなたを消すのは団長のお仕事ですから。でも、やっぱりちょっと遊んでもらえませんかねっ!」

財前はそう言うと、リオめがけて鎌を振り下ろした。

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