超能力者は暇ではない


「いきなり何するんですかっ!!」

咄嗟に後ろに避け、財前の鎌の柄を掴む。

「私の罠に掛かったのはあなたでしょう。私があなたにつけられている事に気づいてなかったとでも?」

「罠……?」

リオが気を緩めた隙に、財前が再び鎌を振り上げる。

「私があなたをここに導いたのですよ!それこそが罠!しかしまさか本当にのこのこと着いてくるとは……くっくっく……あーっはっはっはっは!!!!」

「じゃあまさか……ここは人消師団のアジトじゃないの……!?」

「そうですよ!我等人消師団がこんなにわかりやすい場所をアジトにするはずないじゃないですか!!あはははははっ!!」

財前は鎌を数回素振りしてから、リオの喉に刃先を向けた。

「さあ、どうしましょうねえ。声が出せないように喉を切り裂いて差し上げましょうか……?」

財前がニヤリと笑う。
しかし、リオも負けてはいられない。

「ふふっ……あははははは!!」

今度はリオが大声で笑い出した。

いきなりの出来事に、財前が目を丸くする。

「確かに人間はちっぽけな存在で、一人じゃ生きていけない弱い生き物だ。だけど!」

リオの目付きが変わる。

「そのちっぽけな存在を消して優位に立った顔してるてめーらのほうが、よっぽど小っせえ存在って事に気づけよバーカ!!」

リオの挑発に、財前が目を見開く。

「言いましたね!この私に馬鹿と言いましたね!!あははははは!!なんという馬鹿な生き物なんでしょうね!!」

財前がリオの喉に向けて鎌を振る。
リオは鎌を避けて上にジャンプすると、回転しながら拳を財前の頬に命中させた。

「ぐほぁっ!!!!」

財前がその場に倒れ込み、手から鎌が離れた。

リオは咄嗟に鎌を拾うと、それを財前の首に当てた。

「さあ、全て話せ!なぜ小高と関根を消したのか、なぜ今になって活動を始めたのか、なぜ僕らの存在を知っているのか!」

リオの問いかけに、財前が小さく笑う。

「ふふ、ふ……面白いですね。今ここで私の首を飛ばせば情報を得ることができないから、殺さない……ってことですか。私はあなたを今すぐにでも消せるんですよ?ただ、『団長のお仕事』だから手を下さないだけで」

「その『団長』ってのは誰なんだよっ!!」

リオが叫んだ瞬間、背後から何者かがリオに剣を突き刺した。

口から滴る血。
リオの手から、財前の鎌がカランと落ちた。

「……団長が誰であろうと、貴様には関係のない事だ……」

低い男の声が、リオの耳元でそう言った。

財前はふらりと立ち上がると、落ちた鎌を拾って大きく息を吸った。

「さあて、もう行きましょうか!その少年、もう長くないかもしれませんねえ!どうやって団長に説明しましょうねえ!」

「……そうだな、考えておこう」

男はそう言うと、リオの身体から剣を引き抜いた。

赤黒い血が、メイド服のエプロンを染めていく。

「さあ、行きましょうか」

「そうだな」

財前と男が立ち去っていく。

「待ちやがれ……ッ」

立ち上がろうとするが、傷が痛んで指一本すら動かせない。

遠退く意識の中で、リオは京の顔を思い出していた。

(ごめんなさい京様……僕、やっぱり京様がいないと……ダメ……みたい……だ……)

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