超能力者は暇ではない
◇新たなる仲間
三人は冬草学園高校のすぐ近くにある小さなカフェに入ると、レジからいちばん遠い所にある席についた。
なるべく他人に会話を聞かれないようにするためである。
京は運ばれてきた紅茶にレモンを入れると、咳払いをしてから口を開いた。
「まず、俺らは小高の詳しいプロフィールすら知らない。久保が何か情報持ってるなら教えてほしいんだが……」
久保は、手提げ鞄からノートを取り出すと、それを開いてテーブルの中央に置いた。
細かい字と図がびっしり書かれている。
「これに小高のプロフィールをメモしてあるよ。ほら、ここ」
久保がノートの隅を指差したが、字が汚すぎて読めない。
「なんだこれ……暗号か?」
「暗号でしょうね。僕には読めません」
二人の発言にコケるフリをしながら「なんでやねんっ!」とツッコミを入れる久保。
未だにキャラが掴めない。
「仕方ないなあ〜。オレが読めばいいんでしょ、オレが」
久保は口を尖らせながらノートを持ち上げると、小高のプロフィールを読み始めた。
「え〜っと、小高は妻と息子と三人で暮らしてて、妻は小高の3つ年下。しかも冬草学園高校で水野って名前で働いてるらしいね!ワオ!胸熱!息子は剣道やってる高校生で、大会でも優勝してたりしなかったり〜」
「……すまない、もっとわかりやすく簡単に言ってくれ」
京の指摘に、久保がキョトンとする。
「……わかりやすく言ってるよ?」
「どこがだよ!!ったく、どんだけ顔がイケメンでもコレじゃ女口説けねーぞ」
京が呆れ気味に言うと、黙ってミルクティーを飲んでいたリオが勢いよく立ち上がった。
「京様……今、こいつのことイケメンって言いましたね!?言いましたよね!?僕にだって言ってくれたコトないのに……ッ!!」
リオに指を差された久保が、不満そうな顔でコーヒーを啜る。
京はリオをメニュー表で殴ると、ノートに挟んであった小高の写真をまじまじと見つめた。
「この小高って奴、写真見た感じだといかにも偉そうな感じだよな。なんつーか、今まで何もかも順調にやってきましたーみたいな。てか明らかヅラだよなコイツ」
「そりゃそうだろうね〜。出来の良い生徒には優しくして、そうじゃない生徒には上から目線で偉そうな態度って聞いたし、女子なんかは可愛い子とそうじゃない子だと全然対応が違うってさ。あと髪型は毎日微妙に変わってるらしいよー」
そう言ってから久保は、手を上げてコーヒーのおかわりと店オススメのアップルパイを注文する。
京とリオもせっかくだからとデザートを注文した。
「そういえば、この件で小高の家族はどうなったんですか?やっぱり警察にいろいろ聞かれて大変なんでしょうか?」
店内を行き来する店員に聞かれないようにリオが小さめの声で言ったが、久保は堂々と大きな声で返事をする。
「奥さんは大変っぽいよー。毎日毎日取材の嵐!休む暇もないだろうねえ。まあ息子さんなら暇かもしれないけど」
「……おまえってホント空気読まないのな……」
京が小さな声でボソリと言ったが、運ばれてきたアップルパイを幸せそうに頬張る久保には聞こえていなかったようだ。