黒羽の裏切り
無言で、あの二人を見つめたまま動かない私に痺れを切らしたのか、


肩に手を置かれた。



「おい、あのターゲットのことはもういいからさっさと次のを探せ。


もたもたしてると朝になんぞ?」





あの・・・ターゲット?




「・・・離してっ

気安く、触らないで!」



気づけば涙声になりながら勢いよくゼロの手を振り払っている自分がいた。




「おま・・・・泣いてんの?」



驚いた顔でこっちを見てくる。




「なんで、なんでそんな言い方ができるの?ただのターゲットだなんてっ・・


なんで?

かわいそうだとか思わないの?

彼は・・彼はもうすぐ死んじゃうんだよ?!」




気づけばこらえていた涙がとめどなく頬を伝っていた。




自分でも、こんなに感情移入していることにびっくりしている。




一瞬、困ったような顔をしたが、すぐにいつものあのいらだったような、冷たい表情にもどるゼロ。





「はあ・・・・

いいか?こんなこというのも悪いけど、あんなんでいちいち動揺してる暇ないから。

寿命が見えるってことは当然ああいうふうに余命がわずかなやつらのも見えるって分けで・・・・


お前がついこないだまで人間だったから動揺すんのも分かるけど、

とりあえず今はいちいち騒ぐな。

俺達にできることなんて一切ないんだし。」
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