”オモテの愛” そして ”ウラの愛”

   *

あの光景はたぶん、一生忘れられないと思う。

玄関に靴があって。

悟ったけど、自分の目で確かめたくて、そっと寝室のドアを開けた。

朝日の中、幸せそうに眠る二人の寝顔。

涼の腕が女の背中に優しく置いてあって、女が涼の胸に安心するように額をつけていた。

自分もしていることだから、当然だと思った。

怒る気も、なじる気もなかった。

妙に、なんだか綺麗な光景だな、と思った。

自分がこれを待っていたような気がした。

涼から完全に切られている証拠を。

綺樹は静かにドアを閉めると、クローゼットで必要最低限の物だけをかき集めた。

リビングを見回す。

ここは私の居場所では無かったんだな。

綺樹は微笑した。

そして綺樹は日本を離れた。

もう、そういう意味では戻るまい、と決めて。
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