正夢絵本
電車の中は案外空いていて、座席にもすんなり座れた。
沙耶は座ると同時に大きなため息をついた。


（はぁ…これからは加減しながらあの本使わないとだめだな）


そう思いながら後悔した。
そしてそのまま眠りの世界へと旅立った。





「おい！何してる！」


突然車両に響き渡った男性の声に驚いて沙耶は目を覚ました。


（なっ何だぁ！？）


寝ぼけたままの頭で辺りを見渡す。知らないうちに車内はかなり混雑していた。
沙耶は何があったのかと声がした方を見てみるがあまりに混んでいたので直接見る事は出来なかった。


「はなせっ！」

「大人しくしろ！次の駅で一緒に降りるぞ！」


会話だけ聞いているとどうやら痴漢らしい。


（はぁ、また痴漢かぁ…。）


この電車特に多いんだよね、とため息をつく。


（こういう人がいるから電車立って乗りたくないんだよね…）


すると電車は徐々にスピードを落とし、駅に着いた。


「あっここもう降りるところじゃん！」


ずっと寝ていたため感覚が鈍り危うく自分が降りるべき駅を見過ごすところだった。
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