青空バスケ―another story―
家族と恋人、どちらを取りますか。
陽斗side

「じゃあ……パリに行ったら、ハル兄ちゃんには会えない?」

「会えなくはないよ。
でも、今みたいにすぐに会えるってわけではないな」


その時……海里の目が潤んでるのが分かった。

泣いてる……。


「海里……」

「っ……ボク……そんな遠いところに行くのっ……?」

「え………?」


遠いところに……行く?


「海里……パリに行くのか?」

「パパのお仕事がっ……お引っ越ししたからっ……」


仕事が……引っ越し……。


……転勤。


その二文字しか思い付かない。


そうか……だから七海は……。


「ハル兄ちゃんとっ……まだバスケしたいっ……」

「海里………」

「っ……でも、ボクが泣くとお姉ちゃんが心配するからっ……だから……内緒だよ……?」


……涙目でそう言う海里を、黙ったまま抱きしめた。


海里は……いつもお姉ちゃんのことを考えてる。

お姉ちゃんのことを誰より心配してる。


……泣きたいのに、我慢してたのかな。


海里は俺の胸に顔を寄せて……いつまでも泣き続けた。



< 181 / 300 >

この作品をシェア

pagetop