青空バスケ―another story―

「あたしはお姉ちゃん。
どう頑張っても母親にはなれない。
……だから、あの子の寂しさは埋めてあげられない」


七海が静かにポツリと呟いた。


……七海だって同じなはずなのに。

お父さんとお母さんと一緒に過ごしたいはずなのに。


一人で家事頑張って。

弟の面倒をみて。


一生懸命頑張ってる……。

七海は頑張ってる。


まだそんなによく知らないけど……でも、分かる。


七海がどれだけ家族を大切に思ってるか。


「……でも、海里が言ってたよ」

「え……?」

「お姉ちゃんはママだって。
いつも洗濯や料理や掃除をしてくれるママだって」


海里はちゃんと分かってる。

七海がどれだけ頑張ってるか。

……お姉ちゃんのことをよく見てる。


「お姉ちゃんが大好きだって。
……そう言ってたよ」

「海里が………」


俺はソファから立ち上がると、七海の前に立った。


「……だからさ。
あんまり一人で抱え込むなよ」

「ハル君……」

「何かあったら俺が聞くから。
全然頼りにはならないかもしれないけど……少しは支えになれるかもしれない」


ほっとけないんだ。

そんな顔をしてる七海を……。

俺は……七海の笑顔が一番好きだから。


「……ありがとう」


七海は小さく微笑んだ。


< 49 / 300 >

この作品をシェア

pagetop