In the warm rain【Brack☆Jack3】
☆  ☆  ☆




 『AGORA』のキッチンで、ミサトはエイジが教えて くれたかに玉に挑戦していた。

 先日の一件で“恐さ”を学んだレンは、とっくに店をあとにしていた。

 店のキッチンこそ、色々な料理用具が並び、それもエイジのおかげで綺麗に整理整頓されてはいるが、店の奥にあるミサトの居住スペースはほとんど生活の匂いは感じられなかった。

 日用雑貨その他、生活に必要なものは最小限に抑えられているからだ。


「ん~…」


 レンが帰ってから小一時間、ひたすら卵やフライパンと格闘して出来上がった“もの”を見て、ミサトは首を傾げる。


「なぁにが違うんだろ」


 エイジの作ったものとはあきらかに違う出来栄え。


「エイジはもっと手際よくできるのになぁ…」


 その時、店の入り口に取り付けられたカウベルが鳴った。

 顔を上げると、見知らぬ男が立っている。
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