In the warm rain【Brack☆Jack3】
 グラスに氷を一つ入れ、琥珀色の液体を半分くらい注いだ。

 エイジが何を考えていようと、それを止める権利は、自分にはない。

 ロンを倒し、ホン・チャンヤーの一件は終わった。

 そして、この『AGORA』の元店主で、ウー・イーシーのボスであったハクも、もうこの世にはいない。

 自分達を縛り付けていたものは、もうどこにもないのだ。


「自由に…乾杯」


 グラスを小さく持ち上げて、ミサトは一口、喉を潤す。


「たく…こんな所で」


 夜中にレンが気付いたときには、ミサトはカウンターに突っ伏したまま、寝息を立てていた。

 ブランデーのボトルは半分以上、空になっている。


「何をそんなに荒れてんだか…」


 そう呟きながら、ミサトの肩を揺すろうとして、レンはふと、その手を止める。
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