In the warm rain【Brack☆Jack3】
「怪我、ねェのか?」

「そういうあんたこそ、妙な連中に襲われたりしなかった?」

「こっちは何もねェよ」

「…そう」


 どこ行ってたの。

 そんな言葉が頭の中に思い浮かんだが、それは声にして発せられることはなかった。

 それがどうしてなのかは、ミサトにもよくわからなかった。

 レンも同じようなことを思っていたのか、二人の間に微妙な沈黙が流れる。

 その時、レイが店に入ってきた。


「おはようございます」


 仕込みの為に買った大きな買い物袋をテーブルに置き、レイはミサトの姿を目に止めた。


「どうしたんですかミサトさん、ずぶ濡れじゃない!」


 すぐさまタオルを持ってきて、ミサトの肩に掛ける。


「風邪引くわよ、そんな格好で…レン、あなたもタオルくらい出してあげればいいのに」

「ん? あァ」

「いいのよ。気にしないで」


 ミサトは立ち上がり、タオルを頭に掛けてにっこりと笑顔を作る。


「仕込みはお願いね、あたし、ちょっと冷えたから着替えてくるね」


 あからさまに不自然な笑みに、レンとレイは顔を見合わせた。
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