In the warm rain【Brack☆Jack3】
☆  ☆  ☆




 その夜の営業は、どういうワケかいつもの倍くらい忙しかった。

 深夜になっても、客の数は減ることはない。

 またカウベルが鳴る。


「いらっしゃ…」


 トレーを片手に振り返ったミサトは、そのまま動きを止めた。


「エイジ…」

「よっ。忙しそうだな」

「おかげさまでね」


 適当に座って、とミサトはエイジを促した。

 エイジはかろうじて空いているカウンターの隅の席に座る。


「よォ、忙しそうだな、レン」

「見りゃわかんだろ。冷やかしに来たのか?」

「だぁれがテメェなんざに構うかよ。可愛い子が入ったって聞いたから、見にきただけだ」


 そう言うエイジの後ろで客にビールを運びながら、ミサトはぴくりと肩を震わせた。
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