メルヘン侍、時雨れて候
メルヘンさんは、書きたい小説のあらすじを誰かにあらかた説明した時点で、

ああ、書かなくてもいいかと思ってしまうことが多かった。

誰かに話すこともなく、自分の頭の中で物語を少し動かすだけで、だいたい満足はしていた。

その断片を2~3時間ほど集中してポエムや短編として仕上げることで得る小さな達成感で概ね満足なのであった。

逆に、書こうとして書けないという挫折という穴の淵に目を背けて、そこには近づこうともしなかった。

だけど、今日のメルヘンさんは、一体どうしたのだろうか、紙に顔を近づけて長い時間が経過している。

おにぎりの横には手紙が置いてある。

時折、ふぅと大きく息を吐いては、おにぎりと手紙を眺めて、またさっきまでの体勢に戻った。

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