涙と、残り香を抱きしめて…【完】

まだ買い物があると言う安奈さんと別れ
私は地下鉄の駅へと急ぐ。


昼間の地下鉄は乗客もマバラで閑散としていた。
私の前の座席に座ったのは、小さな子供連れの妊婦さん


大きなお腹を気遣いながら、やんちゃな子供を愛おしそうに見つめるその眼差しに、"女の幸せ"を見た様な気がした。


私も、自分の子供を抱く時がくるんだろうか…


平凡な女の幸せを手にする事が出来るんだろうか…


仁を求めれば、それは望めない。
でも…成宮さんとなら…


私の中で、少しずつ何かが変わろうとしていた。


8年前とは違う居場所が出来たから?




マンションに帰ると一気に疲れが出て、ソファーに倒れ込みそのまま眠ってしまった。


頬にほんのり温もりを感じて眼を覚ますと、ぼやけた視界に成宮さんの顔が浮かび上がる。


「星良…大丈夫か?」

「えっ…成宮さん?なんで?」

「西課長が、星良が気分が悪くなって早退したって言ってたから、気になって仕事を早く切り上げて帰って来た」

「打ち上げは?」

「星良が居ない打ち上げなんて、出る気にならねぇよ」


私の新たな居場所…
それは、成宮蒼の腕の中


「…成宮…さん」

「んっ?」

「抱いて…」


彼の体を引き寄せ唇を押し付ける。


少し面食らった様な顔をした成宮さんだったけど、直ぐにそのキスに応え


「なんだ?エッチな夢でも見たのか?」なんて、私の体を抱きしめてくれる。


「そう…凄くエッチな夢見たの…
だから…欲しい…」


自分でも驚くほど、大胆に彼を誘い
そして、呆れるほど乱れ求める自分を少しも恥ずかしいなんて思わなかった。


だって、私は成宮さんを愛しているんだから…


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