涙と、残り香を抱きしめて…【完】

「揺るぎない…自信…ですか?」

「そう。誰がなんと言おうと、自分以上にこの衣装の素晴らしさをアピール出来る人は居ないという自信」


熱く語る桐子先生の迫力に圧倒されていた。


そして、ただファッションに興味があるというだけでモデルに憧れていた自分が恥ずかしくなる。


「ランウェイに立てば、初心者だろうがベテランだろうが関係ない。その時点でもうプロなのよ。
自覚と責任を持ちなさい」


厳しい言葉だった。けど、桐子先生の声はとても優くまるで私を包み込む様に温かかった。


そして、その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが弾けた。


「顔つきが変わったわね」

「桐子先生…私…」

「何も言わなくていいわ。もう島津さんは大丈夫。
明日のショーは心配ないわね」


何もかもお見通しの桐子先生には敵わない。


でも不思議だ…。もう私の中に不安も恐怖も存在しない。
感じるのは、心の底から湧き上がってくる"私なら出来る"という揺るぎない自信。


あのドレスの素晴らしさを伝えられるのは、私しかいないんだ…


もう、迷ったりしない。


桐子先生を真っすぐ見つめ「最高のショーにします」と強い意志を言葉にした私に、桐子先生は「楽しんできなさい」と大きく頷く。


桐子先生に会いに来て良かった。
明日香さんに感謝だな…


そして、微笑む桐子先生にお礼を言って病室を出ようとした時、私は大切な事を思い出したんだ。


「桐子先生、香山さんに伝えて欲しい事があるんですが…」

「香山に?何?」


驚いた顔で首を傾げる桐子先生。


「先日のお話し…お受けしますとお伝え下さい」

「話し?なんの事?」


香山さんはまだ、桐子先生にあの事を話してないんだ…


「それだけ言ってもらえれば分かると思います」

「そう…」


もう後ろは振り向かない。


前だけを向いて歩いて行こう。


新たな第一歩…
それが、明日なんだ…


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