涙と、残り香を抱きしめて…【完】

_____君に対する愛情は感じられなかった…


私が何より気にしてる事を
サラッと言ってくれる。


動揺したのは、言うまでもない。


でも私は平然とした顔で
彼の言葉を笑い飛ばした。


「当然でしょ?
専務も言ってたじゃない。
私を娘みたに思ってるって…」

「…だな。
娘の事が心配で、なんでも手を出して
お節介したいって感じかもな」


立ちあがった成宮蒼が、含み笑いで私の顔を覗き込む。


「で、話しは変わるが…
島津部長は、借りを作るの…嫌いだろ?」

「えっ?」

「特に部下には」

「…何が言いたいの?」

「今夜、俺と付き合ってくれ
飯食いに行こう。
それでさっきの事はチャラにしてやる」


呆れた…抜け目のないヤツ


「強引ね」

「強引な男、嫌いじゃないだろ?」


成宮蒼の少し上がった口角を真近で見つめていると
なんだか笑えてきた。


変にまわりくどく言われるより
ここまで堂々と誘われると
逆に気持ちがいい


「まぁね…」

「じゃあ、仕事が終わったら
ここに来てくれ
待ってる」

「分かった」


デザイン室を出てドアを閉めながら
フッと思う。


仁と付き合いだして
他の男性とプライベートで2人っきりで食事する事は
極力、避けてきた。


それは、仁に対して後ろめたい気持ちを持ちたくなかったから…


なのに今の私は、仁に悪いとか、そんな風には思えなかった。


なぜだろう…




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