「恋」って何だろう。
「恋」というもの。
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい、お母さんたち後から行くわね」「うん!!」
私、永原瑠花は今日から中学生になる。通うのは、家の近所の北星中学校、略して北中。どんな中学校生活が待っているのかなぁとワクワクしていた。
しばらく歩くと、 北星川という川が見えてきた。川が、日光を反射してまるで宝石のようにキラキラと輝いている。その周りの野原に咲いているタンポポは、黄色い髪飾りを付けた踊り子のようだった。
「うわぁ、キレイ…!」
と、景色に見入っていると「すみません…」
と声をかけられた。振り向くとそこには、北中の制服を着た長身でかっこいい男子生徒がいた。
「あの〜、北星中学校ってどこにありますか?」
「あぁ、それならこの道をずっと真っ直ぐ進んで、大きな桜の木のある交差点を右に曲がれば着きますよ」「あっ、ありがとうございます!」
その男子生徒は礼を言うと、走って道を進んでいった。
その姿を見送っていると、私は自分の体に異変を感じた。心臓の鼓動が、速い……。
「うそ、発作!?」
急な出来事だったため思わず声に出してしまったが、私はちゃんと立っている。そして、自分のほっぺたが熱くなっていくのも感じた。まさかこれは――「恋」っていうヤツ?私は半信半疑な状態だった。
そうだ。急いで学校へ行って友達に聞いてみよう。そう考えると、私は学校へ向けて一目散に走りだした。大きな桜の木のある交差点に着いた。すると、
「瑠花ぁ〜!!」と私の名前を呼ぶ声がした。この声はっ!?と思って辺りを見回すと、後ろから親友の工藤煌が走ってきた。
「おぉ、煌!おはよう!!」「おはよう、制服似合ってるね♪」
「煌もイケてるじゃん」
仲良く二人で話をしていると、私は肝心なことを忘れているのに気づいた。
「あ、そうそう。恋した時ってさ、心臓の鼓動は速くなるの?」
煌は目を星のように輝かせた。
「もっちろん!!その人のことを考えるとドキドキしたり、照れたりするのってその人に恋してる証拠だよっ!!あ、もしかして瑠花、誰かに恋しちゃったのぉ〜?」
「えぇっ!?いやぁ、私は恋なんてしないよ〜…」
やっぱり、あれは「恋」なんだ。私の、「初恋」なんだ。「恋」という不思議なものについて考えながら、私は煌と一緒に北中の正門をくぐり抜けた。
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