君と本気のラブゲーム
さっきも強く掴まれた、右の手首。
「ちょっ…!」
再び掴まれて、ぐっと引き寄せられた。
「きゃ」
体育座りをしていた私は、その瞬間上半身が軽く持ち上がったような感覚がした。
強い力に痛みに思わず上げた短い悲鳴と共に、握っていたはずのコーンが地面に落ちていった。
少しだけ持ち上げられた身体が、京佑くんの方にバランスを崩して。
気が付いたら、彼の上に上半身が乗っていて。
驚いて咄嗟に顔を上げると、上げた先、鼻先がふれあいそうな距離に、ひどく整った京佑くんの顔があった。
目の前の、真剣な顔をした京佑くんに、私の心臓がドクンと跳ねる。
ゴクリ、と、自分の喉が音を立てたのが、どこか遠くのことのように感じた。
……目が、逸らせなかった。
……こんな顔、知らない…。
……こんな目、知らない…。
「……綺深」
声と共に吐いた息を感じられそうなくらいの距離で、甘く名前が呼ばれた。
「…っ!」
瞬間、もう一度心臓が跳ねる。
こんな甘い声、知らない…!
「……は、離、して」
やっと口から出たのは、自分でも情けなくなるくらいの、掠れて弱々しい声だった。声と言うよりは、息に近いくらいの。