君と本気のラブゲーム


「……気に入った?」


隣に気配を感じてハッとする。


あんまり景色がきれいだったから、見惚れてしまっていた。



京佑くんは、静かに私の隣に腰を下ろした。


「ん」


そして、缶を差し出してくる。


見ると、缶にはアイスココアと書かれていた。


……これを買いに行ってたのか。



「ありがとう」


そう言って受け取り、缶をあけると、隣でもカチッと音がした。


「そっちは何?」


「コーヒー」


一口、飲んでから京佑くんはそう答えた。


「いくら」


「……これくらいいいって」


「奢られるの嫌なの」


「……ったく。120円」


ため息を吐きながら、京佑くんはそう言った。


私は一度ココアを京佑くんに預け、財布から120円ぴったり取り出して、渡す。

苦笑しつつ京佑くんはそれを受け取って、ジーンズのポケットに入れた。


そして私はココアを受け取り、一口、口に運ぶ。

…あ、美味しい。




「……」




じゃなくて。


今日は一体なんで呼ばれたの?


これ、どういう状況?






「……俺さ」


しばらくお互い無言のままだったが、ふいに、京佑くんがそう言った。


「なに?」


前を見たまま、訊く。


京佑くんも、私じゃなくて景色を見てるって分かっていたから。



「ひとりになりたいときとか、考え事するとき、よく、ここに来るんだよね」


「……良い景色だもんね」


「そう。昔から、ここから見る景色が好きだった」

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