恋に恋して恋をする。
「何やってんだか……」


トイレの鏡とにらめっこしながら呟く。


本当は戻りたくない。


でも大のほうだと思われても悲しいので渋々ドアを開けると、外で待っていた他の客がチッて感じで私と入れ違いに入った。


いやいや、そんなに長居してませんやん……


何かトコトンついてない。


トボトボと部屋へ戻ろうとしたら、ドリンクバーのほうからトモヤくんの声がした。


「ケータイ忘れたとか意味わかんねぇ」


……どー考えても私の話だよね。


「お前に番号教えるの嫌だったんじやね?」


一緒にいた男の子がからかうように言うと、


「はー?だったらはっきりそう言えや」


いやいや、そんなことはっきり言えんでしょ。
てかマジでケータイ忘れたんだってば。


「とか言って本当はタイプだったんじゃねーの~?」


「はー?マジないから!!浮いてるから情けかけてやっただけだし。
あのバレリーナみてーなカッコも意味不明!!」


あらら、そこまで言っちゃう?


「てか俺、便所行ってから戻るから、コレ持って行って」


わーお!トモヤくんこっち来た!


とりあえずトイレに戻……ってさっきの人まだ入ってるし!!


こっち……は行き止まり!!


ヤバいヤバいヤバい!
気まずすぎる!


パニックになってぐるぐるしている私の腕を、誰かがおもいっきり引っ張った。

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