Special Edition
「お帰りなさいませ」
自宅の門先で、
執事の杉下が声を掛けて来た。
「ただいま。親父は?」
「旦那様はまだ……そろそろ、お帰りの頃かと…」
「ん」
俺は小さく頷き、母屋へと。
今日は15時まで茶道教室の仕事をこなし、
そして今、自宅へと帰宅したところ。
汗ばんだ着物を脱いでシャワーを浴び、
軽く髪を乾かし、正装へと再び和服姿に。
16時少し前に母屋へと向かった。
居間で1人、お茶をしている母親。
いつもならゆのも一緒にいるハズなのに。
「母さん、ゆのは?」
「んッ?……ん……ん~……」
明らかに言葉を濁し、
白々しい笑顔全開で……。
―――――怪しい、怪しすぎる。
母さんが絡むとロクなことが無い。
「ゆのはどこだよ」
「ゆのちゃん?」
「とぼけんな」
あからさまにとぼけた表情で聞き返して来た。