Special Edition
彼女の髪を一撫ですると、
「京夜様」
「ん?」
「あちらの和服姿の方はどなたでしょうか?」
彼女の視線の先には、
俺らと同じ世代の男女が和服姿で円卓に着いていた。
「さぁ、知らないな」
会場には和服姿の人は何人もいたが、
希和が気になる彼らは、その中でも1番若く見える。
なのに、着物をしっかりと着こなしている感じは
見ていて只者ではないと直ぐに察した。
すると、彼女は近くにいたスタッフに彼らの事を聞いている。
気になったら直ぐに調べるのが彼女のスタンス。
「京夜様」
「ん?」
「茶道香心流の家元ご夫婦だそうです」
「夫婦?」
「はい。お若いのに、着物を着こなす風格はやはり家元ならではですね」
「………そうだな」
彼女の言う通り、風格がある。
気品とでもいうのか、独特のオーラが漂っている。
「すみません、少し宜しいですか?」
「………はい」
メディアからコメント依頼を受け、渋々対応し始める。
その間、希和は笑顔を繕いつつも
視線は先程の夫婦に向いているようだった。