Special Edition


彼女は時折左側に顔を向ける。

彼女の左側に俺が座っているからだと思っていたが、

2時間程した頃、それは違うのだと気付いた。



ドレスのデザイン上、アシンメトリーな為

右肩はガッツリ露わになっていて袖がないが、

左腕は手首の辺りまでしっかりと袖がある。


だが、襟口が広いせいで肩骨が見えそうな感じに。


恐らく、昔に負った傷痕を気にいているに違いない。


母親もその点を考慮して、このデザインにしたのだろうが

どうも彼女は…………不安そうだ。


俺が傷の事を知っているとは思っていない彼女は

俺に対して何も言わない。


プロポーズしたが、俺は彼女を大事にしたくて、

未だに彼女の傷痕を見るような状態に至っていない。


一度でも俺が傷を見れば、彼女も落ち着くのかもしれないが……。


肘の傷はそれほど目立ったものでないから

近づかない限り解らないだろうが、

きっと、肩の傷は肘とは比べものにならないくらいなのかもしれない。



だから、時折見せる憂いな視線に俺の心はチクッと痛みを帯びていた。





食事も落ち着きを見せ始めた頃―――。


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