Special Edition


けれど、俺はそれも承知の上で医師になろうと思っている。

“人の役に立ちたい”と思ったのは中学の頃。


当時、姉貴に連れられ買い物に出掛けた時。

交差点で信号待ちをしていた俺らの方に

突如、車が突っ込んで来た。

俺と姉貴は辛うじて避けれたが、

買い物袋を手にしていた女性が車にぶつかってしまった。


目の前で腕を押さえながら蹲る女性を見ても

俺はどうする事も出来ず、大パニックだった。


姉貴はすぐさま携帯で救急車を呼び、

周りにいた数人で散乱している品物を拾い集めて……。


すると、交差点を通過した1台の車が少し先で停車し、

その車から1人の男性が駆け寄って来た。


「名前は言えますか?!」


蹲る女性に声を掛けながら、

周りにいるいる俺らに状況を聞く男性。


女性が痛がる腕部分に慎重に指先を当て、

そして、女性に痛みの具合を尋ね始めていた。


女性との会話で彼が外科医の小川医師だという事が解った。

そして、彼女の腕は肘の少し上部分が骨折した恐れがあるのだとか。


その機敏な対処に俺は感動していた。


「姉貴、医者って凄いね。………姉貴?」


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